乳がんとは
乳がんは、乳房のなかの母乳をつくるところ(小葉組織)や母乳を乳首まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍です。
乳がんの発生は、20歳過ぎから徐々に増え始め30歳代ではさらに増え、40歳代後半から50歳代にピークを迎えます。20歳過ぎれば、乳がん年齢です。
欧米に比較して、日本女性の乳がん発生率は低かったのですが(約5〜6分の1程度)近年急激に増えてきて1996年からは女性がかかるがんの第1位になっています。
2004年の罹患者推定数は50,549人(16人に1人)、2007年の死亡者数は11,890人にもなります。
腫瘤の大きさ(cm) /発見状況 |
0〜1.0 | 1.1〜2.0 | 2.1〜5.0 | 5.1〜 | 不明 | 合計(%) |
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自己発見 | 9.9 | 33.4 | 44.9 | 8.2 | 3.8 | 100 |
検診 (自覚症状あり) |
15.0 | 37.3 | 37.4 | 4.7 | 5.6 | 100 |
検診 (自覚症状なし) |
34.1 | 33.4 | 16.3 | 1.1 | 15.0 | 100 |
その他 | 27.5 | 28.8 | 24.7 | 5.3 | 13.8 | 100 |
不明 | 17.3 | 27.7 | 24.5 | 5.4 | 25.2 | 100 |
合計 | 17.1 | 33.3 | 37.3 | 6.3 | 7.0 | 100 |
乳がんになる女性が増えた理由
乳がんの発生と進行には、女性ホルモン(エストロゲン)が関係あると考えられています。
食生活の欧米化にともない、高タンパク・高脂肪の食事が増え、日本人の体格は向上しそのため女性の初潮の時期が早まり、閉経の時期が遅くなるという傾向があります。
女性ホルモンの影響を受ける期間が長くなったことが、近年の乳がん増加に関連があるとされています。
エストロゲンの作用を阻害することができれば、乳がんを抑制することができます。
乳がんにかかりやすい人
以下の項目に該当する場合は、乳がんにかかるリスクが少し高くなると言われています。
① 月経 初潮が早かったり、または閉経が遅かったりした場合
② 出産 初産が遅かった場合
③ 授乳 授乳の経験がない場合
④ 体重 閉経後に急に肥満になった場合
⑤ その他 避妊薬ピルや女性ホルモン、を常用している場合
検査の種類について
乳がんの検査には、大きく分けて以下の3つがあり、診断を組合わせて、乳がんを診断します。
1.視触診
これは文字通り、乳がんやリンパ節を見たり触ったりして「しこり」を発見する診断方法です。乳がんの初期段階では、他のがんに見られる疲労感や食欲不振による体重の減少などの症状がほとんどないという特徴があります。ですから、専門家による触診はもちろん、自己検診が早期発見には重要です。
2.画像診断
視触診で発見しにくい、小さな腫瘍やがん細胞を発見するのに有効な診断方法です。代表的な診断として、以下のものがあります。
■ 超音波検査
乳房に周波数の高い超音波を送波する機械を当て、乳房内部から返ってくる音波の変化をコンピューターで画像に変化させて、その断面図を見るものです。検査自体も容易で全く痛みもなく、検査費用も比較的安価であるという利点がありますが検査結果にばらつきがあるという問題点もあります。
■ マンモグラフィ検査
乳腺・乳房専用のレントゲン撮影で、乳房を挟みながら圧迫して、上下方向から1枚、左右方向から1枚(合計2枚・両 方の乳房を撮影する場合は合計4枚)撮影します。触っても判らないような早期の小さな乳がんは勿論、しこりを作らない乳がんを白い影(腫瘤影)や非常に細かい石灰砂の影(微細石灰化)として見つけることができます。超音波検査と比較して、2〜3倍の乳がん発見率がある有効な検査方法です。
3.細胞診・組織診
細胞診(穿刺細胞診)は、細い注射針をしこり(腫瘍)に刺し、中の細胞を取り出し顕微鏡で見る検査です。腫瘍には悪性と良性がありますから、しこりがあっても良性腫瘍ならがんではありません。また、乳首からでる分泌液も細胞診を行います。細胞診ではっきり診断がつかない場合は、しこりの周囲に麻酔をかけ、メスで一部または全部を切除して組織診を行います。最近では「針組織診」という、特殊な機械と少し太めの針を使った組織の一部を切除する方法も普及し始めています。メスでの切除に比較して安全性が高く、短時間でしかもキズがほとんど残りません。